博多どんたく (旧暦 弥生十八日)

 現在、『ブラック・ジャック』の全エピソードを新規に購読する手段は、ありません。「指」「植物人間」「快楽の座」の三話が、手塚プロの意向により封印されているからです。
 かつて秋田書店チャンピオンコミックス第4巻(旧版)に収録されたことのある「植物人間」を除き、「指」と「快楽の座」は一度として単行本収録されたことがないので、なおさらに厳しい。特に「指」は「刻印」へと切り貼り改造されているので、原稿そのものが切り取ったパーツとしてしか残っていないと思われます。「指」と「快楽の座」をどうしても読みたい人は少年チャンピオンの掲載号を発掘するしかありません。

 上記三話を除いた残りの全エピソードを一気に購読。
 となると、お大尽であれば、2012年から 2013年にかけて刊行されていた復刊ドットコムの『ブラック・ジャック大全集』全十五巻が段取りとしては一番簡単でしょう。レビューを見る限り内容的には特筆するものもないそうですが、とにかく一種類のセットで全話(−3)が揃うメリットは、いちおうある。
 とは言え、これはすでに刊行が終わっているシリーズ。今さら古本で揃える価値など、それこそコレクターでもない限りカケラもないでしょう。

 では現実的路線では、どうするのがベターか。

 一つはチャンピオンコミックス全二十五巻です。連載当初から刊行され続けているものですね。
 しかも旧版であれば「植物人間」も収録されている……まあ、古本を発見したとしてもプレミア価格でしょうが。(;^_^A
 ただ、いくつか難点が。
 このチャンピオンコミックス、収録順が滅茶苦茶なのですよ。掲載順とは違い、てんでバラバラ。手塚先生の意向らしいのですが、それにしても出鱈目すぎて混乱します。ピノコが登場した後でBJの独り暮らしエピソードがあったり、ドクター・キリコの初登場エピが何度も登場して妹さんともども読者にお馴染みキャラとなった後だったり。絵柄にしても新旧ゴチャゴチャなので、読むほうとしては本当に困ります。
 扉絵が一切ないのも欠点ですね。これはまあ、タイトルに関係なくチャンピオンコミックス全体の傾向ですが。

 もう一つの候補は、同じく秋田書店から刊行されている新装版全十七巻。
 こちらの優位な点は、収録が掲載順となっているところです。いえ、妖之佑は持っていないのですが、そうなのだそうです。しかも、扉絵も小さいながら載っているそうで。今から新たに買い揃えるなら、新装版の一択でしょうね。

 なお、チャンピオンコミックスも新装版も収録は不完全です。どちらか一方だけでは足りない。
 つまり、どちらかを主に、もう一方を補完用にするのが現実的でありベターな方法ということ。

 とか言いながら、妖之佑は少し違うんですけどね。
 妖之佑の場合、チャンピオンコミックス全二十五巻を揃えたうえで、新装版ではなく秋田文庫の第17巻で「金!金!金!」と「不死鳥」を補完しています。

 さて、これで完璧(−3)か? と思いきや、実はそうではない。
 一方の新装版を主にして揃えても、同様です。
 チャンピオンコミックス、新装版、どちらにも「落下物」と「壁」が入っていない。さあ困りました。

 ……いえ、実は困りません。
 秋田書店は読者を見放しませんでした。


 『BLACK JACK Treasure Book』『BLACK JACK The Complete Digest』
 『ブラック・ジャック トレジャー・ブック』
  手塚治虫/秋田文庫
 『ブラック・ジャック ザ・コンプリート・ダイジェスト』
  手塚プロダクション中野晴行/秋田文庫


 重要なのは左側、『トレジャー・ブック』のほうです。
「お宝本」と銘打ったとおり、これには「壁」と「落下物」が収録されているのですよ。
 建前としては収録作はオマケ要素であり、あくまでもBJ解説本という体裁なんですけどね(食玩みたいなものか)。だから秋田文庫としても全十七巻に入らない番外扱いなのでしょう。
 これを入手することでコンプ(−3)にできます。昨今の出版事情では、いつ絶版になるか判ったもんじゃないので、お求めは、お早めに♪

 写真右側の『ザ・コンプリート・ダイジェスト』は、BJ全話の紹介本です。一話一頁で掲載順に解説されているので、大雑把に全話を知るのに便利です。すでに完璧なリストをご自身で作っておられるかたには必需とまではいきませんが。
 ただ、封印された三エピソードもカット込みで紹介されているので、資料本としても少しながら価値ありだと思います。
 注意事項があります。この本が出た時点では秋田文庫は第16巻までしか出ていません。なので解説文において「金!金!金!」と「不死鳥」が単行本未収録作品となっています。もちろん、この二話は秋田文庫第17巻に入っています。また、この解説文で言う「新書」とはチャンピオンコミックスのことであり、新装版は、まだ刊行されていなかった。そのあたりを考慮して解説を読む必要があります。



 ついで話に。
ブラック・ジャック』と同じく少年チャンピオンで連載された『ミッドナイト』。
 これもまた『ブラック・ジャック』の一部だと個人的には考えています。言わば“BJ外伝”でしょうか。形式的にはスピンオフに近いのかもですね。
 BJ好きであれば『ミッドナイト』もチェックしておくべきだと、そう思うのでした。
 なお、その際は必ず秋田文庫全四巻もしくは手塚治虫文庫全集全三巻で揃えましょう。まちがってもチャンピオンコミックスや手塚治虫漫画全集を選んではいけません。BJが活躍する最終話は現在、秋田文庫と文庫全集しか収録していませんので。