甲子 (旧暦 如月十七日)

 『ルパン三世 カリオストロの城』
 『ルパン三世 カリオストロの城
  ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン VWDZ 8206


 BDはパッケージが気に入らないのと、ジブリが嫌いなのと、古い作品にBDのスペックは不要なのとで、DVDにしました。
 巷の話では、リマスター作業は東宝によるそうですが。残念なことに販売がディズニーのためジブリ作品扱いとなり、冒頭に東宝ロゴが入りません。その意味で不完全収録と言ってしまいます。(;^_^A
 もしも東宝から発売されることがあるなら、その際はBDを買おうと思います。


 何度も言っているとおり、この作品は、それ以前に宮崎さんが参加なさっていた東映動画作品『長靴をはいた猫』の構成を骨格に、同『どうぶつ宝島』のパーツを素材とし、モーリス・ルブラン作『カリオストロ伯爵夫人』などアルセーヌ・ルパンにおける言わば“カリオストロ編”を原作に据えた物語である。と断定できます。
(時計塔と偽札という二つの要素をキーワードに捉えTV一期「ニセ札つくりを狙え!」が原型だとする安直な考察がありますが、さすがにその説はないわー。まあ、一期のアレがアイデアのきっかけくらいにはなったかもですが、原型とか原案とか、ないわー)

 いちいち挙げる必要もないのですが。
長靴をはいた猫』のペロとピエールがルパン、ローザ姫がクラリス、そして魔王ルシファがカリ公となります。いちおう、殺し屋は銭形、ネズミの盗賊は次元&五ヱ門ですかね、こちらの対比はどうでもいい要素ですが(笑)。
 そして、ルパンの超絶幅跳びや、クラリスが時計塔の最上部にまで追いつめられルパンともども落下するのも、『長猫』そのもの。
 一方で伯爵の最期は『どうぶつ宝島』から取っていると思われ。まあ、あっちでは死にませんが、伯爵は死んだよね?


 とまあ、能書きはこんくらいにしましょう。そもそも妖之佑のごときトーシローが語る必要のない名作ですから。
 なので感想文に代えて、個人的なピンポイントの思考を記してみようと思います。



 一つ目。
 五ヱ門は、なぜルパンたちと別行動したのか?

 大公殿下のお屋敷跡でルパンたちと合流した五ヱ門ですが。あそこが初登場シーンでないのは、今では周知の事実。冒頭、国営カジノを襲ったときに、500 の後部座席に後ろ姿が映るし、何より追っ手の車があらかじめ斬られてましたからね♪
 では、なぜ、あそこで一旦、別れたのでしょう? と、ここまで進めてみたものの。
 たぶん↓が正解♪

https://togetter.com/li/1037312

 オイラが考察する必要、なかったな(爆)。



 二つ目。
 不二子は誰に雇われていたのか?

 まず前提として、城に潜入していた不二子の目的が何なのか、ですが。これはラストシーンで判ります。ゴート札の原版ですよね♪
 ですが、それにしては不二子の行動あれこれが回りくどすぎます。

 少し視野を広げてみます。
 TV一期の不二子は自分の組織を持っており、ボスとして行動していました。かまいたちが隠したお宝を狙ったときとか、示刀流が持つ斬鉄剣の秘伝書を狙ったときとか。
 TV二期以降の不二子は、どこぞの権力者や金持ちに雇われつつも、雇い主とルパンの両方を裏切るという不二子スタンダード(笑)。一期でも星影銀子の組織と組んだことがありますね。
 まあつまり、相手が小物でない限り不二子はそれなりのバックを用意して行動するということ。カリオストロ城は超大物ですから、個人プレーするはずがないのです。

 思い出しましょう。クラリスに正体を明かしたときの台詞。そう、自分のことを「城の秘密を探る女スパイ」と言いましたよね。
 無垢なクラリスに偽情報を流して伯爵への攪乱に利用する意図がなかったとは言い切れませんが。でも、赤い服をまとった不二子が、伯爵の仕事ぶりを絵画の目越に覗き見たり、物置みたいな部屋の引き出しにある書類をペンダントに偽装したカメラで撮影したりと、たしかにスパイ活動してました。
 不二子の目的が原版なら、こんなことをする必要などありません。城内の男どもから偽札の工房で働く連中を割り出し、工房の場所を突き止めればいいだけのこと。あとは原版を持ち出す機会をじっと待つ。「一年ぶりに」ルパンに再会したときの不二子は、とっくに地下工房を見つけてますよ。

 さて。
 用心深いカリオストロ伯爵が城内勤務に、それも自分の花嫁の侍女として外国人を雇うのは、普通の神経ではあり得ません。クラリスも伯爵も「フジコ」と呼んでいたので日本人もしくは日系人であることは明かしているはず。まあ東洋人なので、どちらにせよ異邦人ですわな。
 ちなみに、クラリス「先週、修道院からお戻りになったばかり」なので、その侍女として雇われた不二子も、城に入ってさほど間が経っていないはず。いったい、どうやって信用を得たのでしょう?

 妖之佑の推理を申しますと、ゴート札潰しの黒幕がいるのですよ。

 直接に伯爵を追いつめたのはルパンと銭形の行動ですが、腰の重い国連やICPOを何とか動かそうと水面下でいろいろやっていた人物がいたに違いありません。あるいは、その黒幕さんは先祖代々、ゴート札を叩き潰そうと暗躍してきた? あの地下の白骨群の中に代々の黒幕さんが放った密偵もいるのでしょうか。
 そして、その筋では超有名な腕の良い女スパイを雇うに至った。脱出ついでに銭形がやったように、不二子も国連なりICPOなりを動かすに足る証拠集めをしていたのだと考えられます。それなら回りくどい行動にも納得がいくというもの。
 そして、その黒幕さんはもちろん国家レベルの重鎮であり、伯爵の言うところの「友人」の一人なのでしょう。そう、不二子は「友人」さんの紹介で城に就職したのですよ。だから伯爵も受け入れた。あるいは胡散臭いと思いつつも断れなかった。
 正体バレののち、不二子は堂々とTV局スタッフとして再入城を果たします。我々映画鑑賞者には不二子だと明々白々ですが、伯爵ら欧州人には東洋人の顔は多少メイクを替えただけで誤魔化せたのでしょうか(笑)。実際、不二子はメーキャップ程度の軽い変装をしていたと思いますよ。このTV局が本物で大手なのは衛星中継(劇中の「宇宙中継」というフレーズがレトロで良いねぇ♪)であることから明らか。大手放送局への就職も不二子の手腕なら楽勝でしょうが、ここも黒幕さんの後ろ盾あってのことと解釈したほうがよさそうです。ただし、不二子と組んでいたカメラマンは怪しいですね。放送を止めるべく影が襲ったときも、不二子が影にレンチや銃で反撃したときも動じなかった。あるいは彼は不二子の「本業」での手下なのかもしれません。それも含めて、放送局にも顔の利く黒幕さんの存在は明白なのだと思います。

 日本人である不二子を姫様の侍女にと伯爵に紹介したこと。
 そして、地下に大日本帝國軍軍偵・河上源之助氏の遺言があったこと。
 この二点を根拠に、黒幕さんは日本人のお偉いさんである。
 不二子は、その黒幕さんの依頼に乗じて、まんまとゴート札の原版をゲットした♪
 と結論づけて、おしまいといたします。ご静聴ありがとうございました。