月に叢雲、花に風。
という言葉があります。
意味は「好事魔多し」ということで。
つまり叢雲も風も邪魔者として扱われています。
ただ。
天空にポツンと孤独に浮かぶ満月より、手前に少し雲がかかるくらいのほうが景色として良いという意見があります。満月を描いた絵にも、そんな構図が多いように思いますし、月見に欠かせないススキも同様のアングルで描かれます。近年で言うなら、名月に電波塔や高層ビルを被せる写真ですね。また、卵白が熱で薄く白んでいる月見蕎麦や月見饂飩など、まさしくその絵面でしょう。ちなみに、押井守監督は『立喰師列伝』の劇中人物に「月見蕎麦と卵落とし蕎麦は、まったくの別物だ」と言わせています。
一方、草原や荒野の花一輪を描いた動画は映画であれアニメであれ、たいてい風に揺れてますよね。
そう考えると、
月に叢雲、花に風。
を前向きの意味にとらえても良いかもしれません。
月や花は単体よりも雲や風とセットのほうが趣がある、ということ。
月に叢雲を好意的にとらえた最初が何なのか誰なのか。
清少納言が『枕草子』とかでやってそうな気もしますが、まともに読んでいないので判りません(とある、さくらいろなおかたに訊ければいいのだが……)。
吉田兼好が『徒然草』で語っていることが、やや近いように思えますが、それでも少し違うな。
とりあえず月見蕎麦ひとつ♪