庚申 (旧暦 葉月十一日)

 何とはなしに『科捜研の女』の再放送を観ていましたところ。
「S.R.I.」の文字が目に入り、はたと気づきました。

 あー。
 この番組って、ひょっとして『怪奇大作戦』が元ネタなのかな?

 と大胆に思ったわけです。
 もちろん『科捜研の女』は大雑把に言って刑事物に分類され、怪奇系特撮作品の『怪奇大作戦』とは趣もテーマも違います。
 が、専門に特化した科学調査によって犯罪捜査を助ける、というコンセプトでは一致するわけですね。

 この『怪奇大作戦』において、警察の捜査に科学面で協力する民間組織の名が「S.R.I.(科学捜査研究所)」。まさに「科捜研」と同名。
 平成になってリメイクされた『怪奇大作戦 セカンドファイル』や『怪奇大作戦 ミステリー・ファイル』ではNPO法人「S.R.I.(特殊科学捜査研究所)」へと設定変更されていますが、これは現実に警察組織に科捜研が設置されたため改名が必要だったという理由だそうです。

 そもそもの『怪奇大作戦』の概要が。
 科学技術を悪用した凶悪怪奇犯罪に対して、警察での限界を感じた鑑識課課長が退職、自ら科学犯罪を専門に研究・調査する民間組織を立ち上げた。それが S.R.I.(科学捜査研究所)。S.R.I. は警察の鑑識では手に負えない事件に、最先端の科学力で協力、事件解決を目指す。
 といったところです。
 つまり、「バケモンが人を喰った!」などの怪奇事件が実はれっきとした殺人事件だと明かすのが S.R.I. のお仕事。基本コンセプトとしては「おまえらのやったことは、まるっとお見通しだ!」と叫んでタネを暴く山田と同類であり、怪奇要素を無視すれば京都府警の榊研究員とも重なるわけですね。

 そんな『怪奇大作戦』より後になり、現実の警察に科捜研が設立された。
 これは何と言いますか、ひょっとしたら円谷プロのおかげなのかもしれませんね。だって、鑑識課では限界があるから、もっと専門知識を持ったチームが必要だとなって現実の科捜研ができたのなら、まさに『怪奇大作戦』の S.R.I. と同じ理由での設立ですから。あるいは『怪奇大作戦』を観ていた人の頭の奥底に影響が残り、のちに科捜研設立に尽力したとかなら、素晴らしいですね。
 ちょっと調べましたところ、警視庁の科学警察研究所科警研)は、かつては科捜研という名称だったそうで。それが『怪奇大作戦』の頃にはすでに科警研に改名していた。つまり、円谷プロ科警研を意識して S.R.I. の設定を作ったのかもしれない、科警研になって廃止された科捜研の名称を拝借したのかもしれない、という楽しい想像が成立します。

 警視庁科捜研が科警研に改名、それを踏まえて S.R.I. が活躍する『怪奇大作戦』が作られ、この番組の影響で各警察組織内に科捜研が設置、それを受けて『科捜研の女』が制作され、一方でリメイク版『怪奇大作戦』での S.R.I. はNPO法人への変更・改名を余儀なくされる。
 なーんて流れであれば、実に興味深いですね。