(旧暦 文月十日)

 物欲の思考実験は続きます(笑)。

 今日は、万年筆を一本だけ選ぶなら、というテーマで。

 いきなり小さなアイテムになりましたが。
 これもまた道具であるからには、用途によって選択基準が変わるのは、車と同じ。

 万年筆の用途って何でしょ?
 書くこと。これは当然。
 では何を(何に)書く? 葉書や手紙、手帳、日記、ノートに走り書き、原稿、絵……くらいかな。
 絵については、ペン先の関係で一本で足りるとも思えず(パイロットのジャスタスだけで見事な絵を描いた動画がありましたが、あれは例外としとこう)。なので、絵描き用は今回、あえて考えない方向で。
 文となりますと大きく二つですね。長文か短文か。この差で選ぶペンも変わる。便箋か手帳かノートか日記帳かチラシの裏かは、ペンではなくペン先で対応するものなので区別しません。問題なのは長々と書くのか、ササッと書いては仕舞うのか。

 ここまで考えを進めて。
 妖之佑なら何を選ぶかを言ってしまいます。
 妖之佑が万年筆を使うのは、第一に応募原稿。今となっては手書きを受けてくれるところは少ないですが、でも使いたい。第二に、原稿に至るまでの下書きやら、あれこれといった殴り書きなどなど。
 つまり、とにかくたくさん書きますね。であれば候補は、かなり絞られます。カートリッジ式は論外。インク補充のたびに、いちいち軸を外すうえに容量の少ないコンバータ式も不満が出るに決まってる(て言うか実際、不満だったよ)。もちろん両用式とか、ありえない。つまりはインク吸入式しかないわけ。この時点で、ほとんどの国内現行品と、かなりの海外現行品が落選します(苦笑)。
 結論。国産では。パイロットのカスタム823 と カスタム ヘリテイジ92 の二種。セーラーのプロフィット エアロ、プロフェッショナルギア エアロ、プロフェッショナルギアΣエアロの三種。都合五つのみですね。これらはペン軸自体にインクを吸入して溜める機能がありますから、軸をバラさずに補充できるうえに、コンバータより容量が大きい。カートリッジなんて話にならない。おかげで、執筆がノッてるところにインク切れでブレーキかけられる事態が起こりにくいのです。
 一方の海外ブランドでは、かのモンブランにも吸入式はありますが約十万円コースです(笑)。ペリカンアウロラが品によっては多少お安いかな。パーカーは、どうだったっけ?
 まー容量で言ったら、インク止め式って、とんでもないのもありますけどね。これは要するにペン軸そのものがインク用タンクになっていて、そこにスポイトで注ぎ入れるという構造。大容量を誇る反面、補充の手間を考えると原稿執筆には、むしろ難ありかもです。品そのものが極端な少数派ですし(逆の理論で「一本だけ」の選択対象には、なりうるか)。
 他にも吸入式は、もちろんあるのですが、妖之佑の知る限り、現行品ですと限定仕様だったりしますね。数が少なく、お高い。カートリッジやコンバータだとペン軸は空洞でいいので作るに楽ということですか。吸入式、便利なのになー。年筆って言うくらいだから、もっともっと貪欲に大容量にこだわってほしいですよ。

 まあいい。

 長々と書かない人であれば、コンバータやカートリッジで何ら問題ないと思います。
 となれば、ほとんどの品が候補となる。あとは好みかな。

 よく聞く「万年筆の書き味」ってのは、カメラの「レンズの味」と同じで、曖昧模糊としたものだと思っています。ほぼ自己満足の世界ね。同じペンに対して人により評価が正反対になったりするのが、その証拠。
 あきらかにペン先が紙に引っかかってしまうとかインクがかすれるとかでない限り、「書き味」ってのは少なくともビギナーが考えても仕方ない。「書いてて疲れない」ってのも、長く使ってみて初めて判ることですから、買うときの参考にはならないかな。
 まー要するに。短文しか書かないのであれば、店頭で手にとってみて、あるいは外見を見て、気に入った物にすればいい、ということです。著名メーカーの物に変な代物はないはずですから、バカみたく高価とか中古品とかでない限りは、どれに決めても失敗しないでしょう。
 その意味では、一本だけを選ぶのは難しいのかな。むしろ、一本使ってみて、二本目に「一本だけ」を選ぶという、ややこしい事態になるか。(;^_^A

 くりかえしになりますが、長文用途だと選択肢が少ないので、最初っから「一本だけ」を選べるのです。

 あと、最初の一本は国産が無難かな。
 価格のこともですが、国産は日本語を書くために調整されているので、まちがいがない。
 対して、モンブランだのペリカンだのパーカーだのウォーターマンだのは、あくまでもアルファベットを書くための道具ですから、日本人が日本語を書くために海外ブランド品を積極的に選ぶ理由は、ないですね。もちろん最終決定は「好きずき」ですが♪

 まー、日本の文豪がモンブランなんて、ガチの定番なんですけどねー。
 でも、まずは国産を使おうぜ。