(旧暦 水無月廿九日)

 当「宿坊」で、やってみたいな、という、ささやかな企画がありまして。
 その構成をどうしたものか、などと暇なときどきに、のんびりと考えたりしていたのです。

 そしたらば、ある日のこと。
 ほぼ同様の意図で書かれた書籍が出ているではありませんか!

 うわー、やられたー。
 と思いつつ、内容確認の意味で買ってみました。被ってない部分が多ければ、個人の趣味サイトなら無問題ではないかという期待を込めてね。

 …………。

 おいこら、カネ返せよっ。
 何だこの中身スカスカな本は。

 結論として、ウチでやっちまっても問題なさそうです。
 なので思惑は引き続き進行。


 で、どういう本かと言いますと。
 特撮作品『ウルトラセブン』に登場した侵略異星人たちは、なぜ失敗・敗北したのか。
 を検証したもの……のはずです。

 実際の本文は、異星人の作戦と称して、ただただ作品の粗筋をなぞってるだけなんですけどねー。で、失敗点を指摘する文も、実質的には演出や脚本に対するツッコミでしかなく。
 良い点を挙げるとしても、収録されている着ぐるみやプロップの側面背面写真に資料的価値がある程度で(クール星人が、あんな扁平だとは知りませんでした♪)。
 しかも、欠番を除くすべてのエピソードを徹底分析(?)したうえでの、総合的な対セブン必勝法がサー。

 セブン一人に対して複数でタコ殴りにしろ。

 って……酷い。酷すぎる。
 これって、ヒーロー作品の基本構造に対する批判に他なりません。例えるなら、等身大ヒーローの変身や名乗りを怪人・戦闘員が黙って待ってくれている、それをダメ出しするようなものです。さらに押し進めれば、舞台芝居の大袈裟な発声や歌舞伎の大見得などを非現実的だと批判するのと同じです。
 要は、やってはならぬことなのですよ。作品のテンプレを否定するのは作品否定であり制作や企画そのものへの否定に他なりません。そうではなく、人によっては欠点に見えるテンプレを上手く解釈したうえで検証・考証を進めることこそ作品愛ではないでしょうか(旧作の『宇宙戦艦ヤマト』に対しては、そういった愛溢れる頑張った解釈・解説が山盛りだったぞ♪)。
 あくまで例えばですよ。異星人の間には基本タイマンのルールがあって、これを破ると惑星国家間の問題となり星間全面戦争にすら発展しかねない。みたいなー♪ 実際に、国際社会での戦争には、いちおうのルールがあるじゃないですか、ハーグ条約とか。それみたいな感じで、宇宙にも闘いの基本ルールがあるとすれば、演出上のあれこれもフォローできる。
 そういった工夫もせず、脚本そのものへのダメ出し同然な戦略分析は、さすがにシラケます。著者氏は映像業界にパイプをお持ちのようなので、今の時代なら大量の情報にもアクセスできるだろうし、せめて『ウルトラマン研究序説』に近いレベルのものは書いていただきたかった。趣味ではなく商業出版なんだからね。ぶっちゃけ、この本をはるかに上回る質の作品研究個人サイトや個人ブログ、巷にザラにありまっせ。
 しかも誤字脱字に多字(笑)まで。用語や言い回しも一部で間違ってる。校正すら、まともにやってなさげなのは低俗雑誌並み。カネ返せよ。

 なお、ここまで生意気に悪し様に書きましたので、最低限のマナーとして、本のタイトル名、著者名、レーベル名は、あえて記さずに伏せておきます。
 ちょい前に出たばかりだとか二千円だとか一峰大二さんの漫画も収録されているだとか言いませんからね。