(旧暦 睦月二日)

 わざわざ、ここで言うことでもないんですが。
 先日、家族との会話の中で「ちゃんこ鍋」という言葉が出たので、声を大にして言いたくなった。
 まー、つまりです。

「ちゃんこ鍋」という料理は存在しない!

 ということ。
「現実にあるじゃないか」というそこのあなた、まちがってます。ないんです。
 言い替えますとね。

「ちゃんこ鍋」という鍋料理のジャンル、レシピは存在しない。

 とすれば納得してもらえるのかな。
 それでも「あるじゃないか」と譲らない頑固者もいるでしょうね。
 これは、相撲料理屋が一般のお客にアピールしやすいからと、誤用を承知で「ちゃんこ鍋」の看板を掲げたりメニューに載せたりするから、ではあるんでしょうね。

 では「ちゃんこ鍋」とは何なのか?
 何度も言いますが「ちゃんこ鍋」などという料理はないです。あるのは「ちゃんこ」です。
 では「ちゃんこ」とは何なのか?

 簡単です。
 大相撲独自の言葉、いわば業界内専門用語で、食事のことを「ちゃんこ」と言うのです。
 これだけ。これが、すべてです。
 力士が稽古のあとなどに食べるメシ、これが「ちゃんこ」です。料理のジャンルは問いません。焼き肉だろうと釜飯だろうとステーキだろうとハンバーガーだろうと、そして鍋だろうと、とにかく食事すべてが「ちゃんこ」。
 ですから相撲部屋にいる「ちゃんこ番」とは単に料理番のことなのですよ。決して鍋奉行を意味してはいない(笑)。

 もう少し補足的に厳密に言うと、相撲部屋で供される食事のことを「ちゃんこ」とするのが、より正確かと思います。関取が、どこぞのパーティーに招待されて、そこで出された料理までは「ちゃんこ」と呼ばないほうが正しいでしょう(あくまでも個人的意見)。
 そう考える根拠は「ちゃんこ」の語源にあります。これ、「ちゃん」と「こ」に分けます。「ちゃん」は、あの大五郎の名台詞。そして「こ」は「子」。そうです。「ちゃんこ」とは父子のこと。つまり、親方(師匠=父)と力士(弟子=子)とが一緒に食べるから「ちゃんこ」なのです(諸説あり)。ですから、相撲部屋で親方と弟子たちが車座になって箸を使う、それが「ちゃんこ」だと思います。

 ここのところを、できれば広めてほしいですね。
 巷にはびこる誤用を消し去ってほしいですね。

 なお、「ちゃんこ料理」というのも、上記の理由から誤用となります。
 例えば「チゲ鍋」とかと同類のまちがいです。