納めの薬師、針供養、九星陽遁始め、甲子、天しゃ (旧暦 霜月十日)

 古い話かもしれません。
 妖之佑の認識として。タクシーはコラム・シフトのMTで運転手を含めて六人乗りでした。

 それが気づけば五人乗りで、しかもATだったりする。無論、コラムであるはずもなく。
 どうしてこうなった?

 と訊くまでもないですね。
 昔はMTとATで燃費の差がありすぎた。それが今は大差ないレベルにATが改善している。なら、下手のMTより、ATにしちまうほうが、お客の感じる乗り心地もよかろ。
 コラムでの六人乗りが消えたのも、そこまでして一台に客を詰め込む時代でないことと、大型トラックでもない限り前列三人は運転に支障が出るに決まってるということ。と思われ。
 つまり今のタクシーは五人乗りのフロア・シフトATが普通ということか。

 なんで、こんな話をしたか、察しの良いかたは、お気づきでしょう。
 例の病院に突っ込んだタクシーがプリウスだったからですよ。無知な妖之佑は「あれ? プリウスのタクシーなんてあるの? 個人タクシーだから燃費の良さげな車を選んだ?」と思ったワケ。
 少し調べたら、ジワジワと増えてきているんだそうですね、プリウス・タクシー。理由はLPG車の生産が終焉に近いため、燃費面で有利とされるハイブリッドが業界で密かな人気なのだとかそうでもないとか。で、ハイブリッドと言えばプリウスが挙げられる、と。

 今の時代、特にプリウスに限ったことではないのでしょうが。
 個人的には、人間とエンジンやブレーキとの間にコンピュータが割って入ってる車には乗りたくないですね。
 Windows の様々な実例を見てもプログラムにバグは憑き物……もといっ、付きものです。PCでバグが悪さしても「データが飛んだ」くらいで済みますが。車となりますとね、物理的損害が生じますから、はっきり言ってバグは完璧に排除してほしい。でも、現実的には不可能に決まってる。
 なら、飛行機や新幹線などお金をかけた代物は別としても、車という安い乗り物をプログラムで制御するのは、やめてほしいですよ。ぶっちゃけ怖いです。

 これも妖之佑が旧型車好きな理由の一つなんですよね。
 アクセルやブレーキの操作に、いちいちプログラムが介在するなんて不安で不安で仕方ない。つまり信用できないんですよ。
 インジェクションくらいなら許せますけどね。万一にはブレーキをベタ踏みするとか、強引にギア抜くとか、キーをOFFにするとか、いろいろできますから。
 でも、今の車だと、キーでONにするでもなく、ボタン押すでしょ? こうなると、アクセル暴走&ブレーキ無反応な緊急時に、スイッチまでもが反応しなくてエンジン切れないとか、ならないかな? いや、なりえるでしょ?
 だから怖い。
 ワイヤーやシャフトや歯車で物理的に操作するほうが安心できます。例えばワイヤーが切れてもアクセルが噴かなくなるだけなので、少なくとも暴走事故にはなりません。一方のブレーキのオイル漏れは危険ですけどね。とは言え、ちゃんと点検しておけばいい。バグと違ってオイル漏れは、まともな整備士さんがチェックすれば容易に判りますから。

 電子制御万歳な今の風潮って、けっこう怖いと思うのですよ。
 SF作品とかに、よくあるパニックですし……ねぇ?

 最低限。
 電子制御の車には強制的にOFFにできる物理スイッチが必要だと思います。つか、装備してください。
 ほら、それこそSFモノによくあるでしょ? 「電源を切れ。違うっ! スイッチじゃなく、ケーブルをぶった切るんだ!!」ってヤツ。
 あれは、つまり物理的なブレーカー・スイッチは電子制御の車に必須のアイテムだと思いますよ、実際問題。
 当然のこと、電源がない状態ではモーターがロックされる物理構造になっているべきです。でないと切っても空回りしますから。