三隣亡、虫払い (旧暦 文月二日)

 毎年、この季節になると巷のあちこちで見かける固有名詞があります。

「がしゃどくろ」

 季節関係なく、いかにも「俺は物知りだぞ」と言わんばかりの個人による妖怪解説サイトでも、もっともらしく、この妖怪を解説してますが。

 大嘘ですから。
 そんなの載せるサイトは、無知丸出しですから。
 もちろん解説本も同様。何の但し書きもなく解説していたら、その本と著者をパチモン認定してかまいません。

「がしゃどくろ」なる妖怪は存在しません。少なくとも古来より伝承される妖怪群に、そのような名称のものはいません。
 これ、昭和になって生み出された妖怪(というかキャラクター)なんですよね。つまり「口裂け女」と同世代と言っていいくらい若い妖怪キャラです。

「がしゃどくろ」は巨大な骸骨という感じで解説されています。
 これと外見的に一致する妖怪は古い文献にもあります。が、断じて「がしゃどくろ」なる名前ではありません。

 水木しげるさんの意図せぬ功罪なんですよね、これ。
 妖怪を世に広めた功績。
 と同時に、出典の曖昧なものを確定情報みたく伝えた責任(「がしゃどくろ」等々)、ご自身の誤解による誤情報をそのまま載せた責任(「槌転び」や「釣瓶落とし」などなど)、さらにはご自身の創作物を伝承と一緒くたに混合した責任。
「巨匠・水木しげる」と言えども、責任取ってほしいところなのですよね。

 とは言え、底辺庶民の妖之佑ごときが、偉大な故人にどうしろとも言えませんから。
 後世に続く人々が、水木さんの著作集を資料扱いするのをやめるしか解決策はないのです。
 前にも申しましたが、水木さんのご著書は、資料的価値が低いです。ないとまでは言いませんが、それは「玉石混合」を選別できる人にとってのみ資料的価値があると断じます。
 妖怪について何も知らない人が「資料」として水木さんのご著書に触れることは誤解を生む元であり、危険でしかありません。体験者が言うんだから、まちがいないです!(いやホント、頭の中を矯正するの大変だったんだから……)

 あと念のために言っておきますが。
『ゲゲケの鬼太郎』や『河童の三平』などの漫画作品そのものを資料扱いするのは論外すぎますからね。
 例えば、『仮面ライダーディケイド』の「響鬼編」に出てきた牛鬼ぎゅうきは『鬼太郎』の牛鬼ぎゅうきであり、伝承される牛鬼うしおにとは、その性質が似ても似つかぬ代物でした。あの回の脚本家は、牛鬼に関しては素人以下の仕事をしたワケ。
 妖之佑が述べているのは水木さん名義の妖怪解説本についてですので、そこんトコよろしく。

 妖之佑は、「がしゃどくろ」を妖怪系著作物や解説書の質を測る物差しに使っています。
 これが出てくるなら、その著者・作者・編者はロクな調べ物もしないバカ。もしくは盗作上等な不届き者。と判断するワケ♪
 いや、マジでバカ認定してかまわないですよ。実際バカなんだから。