望、彼岸明け (旧暦 如月十五日、涅槃会)

 『原始少年リュウ』
 『原始少年リュウ』全2巻
  石ノ森章太郎/秋田文庫


 1971年秋から 1972年春までの半年間、連載された作品です。

 作者の曰く「リュウ三部作」の二作目で第一部だそうです。
 太古編『原始少年リュウ』(二作目)、現代編『番長惑星』(三作目)、未来編『リュウの道』(一作目)なのだそうです。
 ぶっちゃけ、『リュウの道』当時には、こんな構想なかったと思いますよ。たぶん『原始少年』にて思いつかれたアイデアなのでしょう。

 内容的には失礼ながら特筆するほどのものでもありません。当時の石森作品の平均値です。
 舞台は石器時代(?)。少年リュウと「りゅうの王」と呼ばれるティラノサウスルとの因縁と闘いを描いた物語……って、どっか変ですよね? 変な事にお気づきのかた多いですよね? 判らないかたは『はじめ人間ギャートルズ』あたりを参考になされば自ずと判るでしょう♪
 実のところ、この変な部分については、あきらかに石森さんが承知のうえで意図的にやっておられます。その証拠がラストの急展開です(アニメではバッサリ割愛された部分)。
 ただ、この作品は、ひょっとすると打ち切りにあったのではないかと想像しています。それほどにラストが唐突で、ぶった斬り感が否めない。本当は、もっともっと丁寧に終章を描くはずだったのではないかと思っています。

 三部作の一つとされていますが、共通項目は主人公の少年が「りゅう」という名前、という一点のみです。他に何もありません。
 手塚先生の『火の鳥』各編同士ほどのつながりすら見受けられないところも、妖之佑が「未消化で終わった」説を取る理由の一つなのです。もしそうだとしたら、本来の石森さんの構想どおりにきっちり完結した『原始少年リュウ』を読みたかったですね。


 なお、『リュウの道』同様に、『原始少年リュウ』にもまた原型と呼べる短編作品が存在します。
 どちらの短編も、これの第2巻巻末に収録されていますので、資料的にも「買い」の本だと思いますです。