下弦 (旧暦 睦月廿四日)

 最高裁も、たまにはまともな判決を出すのですね。

 ただ、この判決を良く読むと。
 基本的には介護担当者が責任を負うべき、との趣旨は依然として堅持されており、他のケースでは相変わらず賠償責任を認める判決が出そうで気になります。

 そもそも容易に路線内に入れないようにするのは、鉄道会社側の義務だと思いますよ。
認知症患者は家族が二十四時間見張っていろ。何かあれば全責任を負え」というのは、いくら何でも現実を知らない者たちの考えです。
 鉄道会社の偉いさんがたも判事たちも、二十四時間の介護というものを長期に渡って経験してから言ってほしいですね。
 でないのなら、認知症患者を縄で縛るとか鎖でつなぐとかくらいは合法として認めてもらわないと無理です。

 あと、個人的に思うのは。
 民法の当該規定は、鉄道事故の巨額な賠償金については想定などしていなかったんじゃないでしょうか。法律が作られた当時は「認知症」という病名も、なかったでしょうし。
 その意味では法改正も必要でしょう。
 公共交通機関という性格から、鉄道事故については公的な補償体制も欲しいところです。

 最高裁の判決を受けてなお「個々の事故について賠償を請求する基本姿勢に変わりはない」と公言してはばからないJR東海社長の冷血さを世論が「鬼畜」「人でなし」と大声で批判する情勢になっていかないと、日本は本当にダメだと思います。
 苦労に苦労を重ねたうえで不幸に見舞われている個人に対して平然と七百万円も請求するなんて、悪徳会社とどこが違うんですかね。