大つち (旧暦 霜月十日)

 NHKスペシャル『新・映像の世紀 第3集 時代は独裁者を求めた』


 衝撃的映像の数々でした。
 人が殺される瞬間や、転がっている山ほどの死体を見てまわる動画を、よもやTVで観る日が来るとは思いもしませんでした(OPPAI モロ出し動画もだな)。
 かつて、チャウシェスク政権崩壊の際、革命軍によって処刑された大統領夫妻の死体は、ニュースに映像が流れましたけどね(欧州だと処刑そのものの映像とか放送されたんだろうか?)。

 教科書では知りようもない(つか、日本の教育関係が子供に教えようとしない)歴史。
 第三帝国を支えたのは、金勘定や名声を優先した諸外国の権力者・著名人たちだった。けっきょく、第二次大戦は、その無思慮な支持者たちに跳ね返った厳しいしっぺ返しだったと言えるのでしょう。ただ、フォードやリンドバーグの声を鵜呑みにした U.S.A.市民にも責任の一端はあると思います。
 同時に、そもそも自分たちが潤えばそれでいい、他のことは知らない、という無責任な姿勢だった独逸国民にこそ、最大の責任があったことは否定できません。何だかんだ言っても、ナチ党に議席を与えたのは当時の独逸国民だった。ヒトラーとナチ党は少なくとも独逸の国内法は何も犯していないわけですからね。

 高橋葉介さんの漫画作品『宵闇通りのブン』最終話「パパを待つ」が、これを揶揄した内容になっています。
 不況にあえぐ市民や金儲けをしたい権力者たちが、強烈な政権批判をする無名の新人候補に期待して政権を委ねる。彼は国を豊かにするため領土拡大を進める。最終的には敗戦、彼は怒れる市民たちによって私刑にされる。そして吊した死体に向かって「ざまあみろ」と叫ぶ市民たちに与えられた結末とは……。
 この劇中、それまで快進撃に沸いていたのが一転、戦況悪化を知った市民たちの台詞が光っていました。曰く「いったいどうなってんだ? 勝つ戦争は賛成だが負ける戦争は反対だ」と。
 大戦当時の独逸国民の態度を的確に描いたコマだと、↑の番組を観た今、あらためて思います。

 軍備拡大が正義だと信じて疑わない政治家や著名人、それを裏から動かして大儲けを目論む層、そして無責任な極右支持を発信し続ける新聞や雑誌や専門書、それらを批判する意見すべてを「サヨク」「国を滅ぼす」と全否定する大きな声……等々。
 我々一般国民は、常に情報を疑ってかかるべきです。でないと、こういった輩の思うままに持っていかれ、最後にはまた悲劇的結末を迎えることでしょう。
 かつて盲目的従属者だった大日本帝国国民たちが、どんな目に遭ったかなど、言わずともお判りでしょう?

 それにしてもね。
 今のNHKで、よくこれを放送できたなと小一時間。
 いや、だってサー。これに込められたメッセージとして、

“一般国民だからといって「知らなかった」では済まされない”

 というのが、はっきり出ていて(独逸国民に収容所を強制見学させた連合軍も、すごかった)。
 当時のナチ政権の経済や外交の進めかたと言い、独逸国民の無知さ(あるいは、あえて知ろうとしない態度)と言い、今の中共や今の安倍政権に極めて似ているわけですからね。
 ともに、まずは経済の立て直しで無知なる国民の支持を手に入れ、ガッチリ基盤を固めたところで打って出る。中共の場合、そのやりかたが国際的にはルール違反と思いながらも各国がカネ優先で強く中共批判をできない状況も、ナチ政権下の独逸とよく似ています。
 また、日本にて第二次大戦の結果や解釈に対しいまだに反論する意見が根強いことは、第一次大戦の戦後処理に反発し続けてきた独逸の姿勢にそっくりな気がしてなりません。
 諸外国の煮え切らない態度をいいことに、中共が既成の国境線を書き替えようと、すでにあれこれ行動を起こしているのは周知のとおり。
 一方の安倍は、さすがに領土拡大は考えていないでしょうが、奴の日頃の言動を見れば、ヒトラーの手法を評価しているのは明々白々。
「侵略は絶対にしない」とほざく中共など、とうてい信用できない。
 とするだけでなく。
 安倍政権を容易に信頼していいのか? という疑問の投げかけ。含まれてますよね。

 今のNHKが、これを放送したのですから。
 関係者があとで、あの会長から何かされないか心配です。

 いやいや。
 この番組を観て、安倍政権をアベノミクスのみで評価し盲目的に支持することの危険性を考えない人は、いくら何でも頭がお花畑すぎるでしょ?