(旧暦 神無月十三日)

 そう言えば、何週か前の回だったかな。
 五郎さんが刺身に醤油を表裏とベッタリ付けてたのを観てて「体に悪いですよ」とツッコミ入れたんですよね。
 以前のシーズンでも、たしかあの分厚いハムカツのときだったか、「健康ブームなんて知ったことか」みたいな心の台詞とともに、ソースをたっぷりかけていましたっけ。

 ドラマ版の五郎さんは、演じておられる松重さんの外見からも、推定五十代。もうそろそろ嫌でも「老」の冠が前方に見えてくるお年頃です。
 そんな年齢の人が、醤油やソースをたっぷりかけた食事を続けていたら、どうなるか? しかも五郎さんは独身で自炊などしない三食外食派のはずです。

 今はまだいいでしょう、今は。
 でもね。
 早ければ十年後には何か来ますよ。そのとき後悔しても遅いんですよ。

 いわゆる「高齢者」に該当する人が病気になるのは、肉体の衰えを考えれば避けられないことではあります。
 が。
 その中には回避できた病気もあるはずです。そう、かつて「成人病」と呼ばれ、今は「生活習慣病」と呼ばれるあれこれです。若いうちは体が頑張ってくれていたのが、歳取ってそのツケが一気に廻ってきたもの、と私は解釈しています。

 周囲の忠告に耳も貸さず、「今の自分が良ければいい」とばかりに好き勝手やって己の体にツケを溜めまくる。
 そして、怖い“奴”がツケを取り立てに来て初めて狼狽えたり後悔したり嘆いたり落ち込んだり周囲に当たったりする。
 みっともないです。
「今さえ良ければ」と言ったのなら、ドンと受け止めろってーの。て言うか「今さえ良ければ」の「今」というのは常に流れているということに気づくべきでしょう。

 私自身、さして偉そうなことを言えた立場ではないのですが。
 身近に、もっと愚かな者を見ざるをえない状況なので、余計にこういったことを考えてしまうのです。

「今が良ければ」と言う、そこのあなた。
 その「今」は常に移ろいゆくものであり、老いてゆく自分にずっとつきまとう「今」であるということを知っておいたほうがよろしいかと存じます。
 五郎さんも、もう少し醤油やソースは控えたほうが素材の味も生きて、より美味しくなると思いますよ。できればタバコもねぇ……。