秋の中古カメラ市。
えーもん見っけ♪
判る人には判る。判らん人には判らん。
そんなカメラです。(を
国産初の 135フィルム版一眼レフ「アサヒフレックス」。これは改良型の IIB です。
「アサヒ」とは「旭光学」のこと。後の「ペンタックス」ね。
国産初ですから、今や当たり前となった姿と違い、レフレックス機構はブローニー版の二眼レフや一眼レフで主流だったウエスト・レベルのファインダーなのです。蓋がパカッと開くヤツね。
しかもI型と IA型はミラーが上がりきりだったそうです。つまり、シャッターを切るとファインダー像はブラック・アウトしたまま。シャッター・ボタンから指を放すと元に戻る。これが、IIB になってクイック・リターン式に改良されましたとさ。
上から覗き込むこのファインダーは、使いようによっては便利なんですよね。
例えば、最後列からしか撮れないとき、上下逆さにして持ったカメラを両手思いっきり上に伸ばして群衆の頭越しに写すとか、できるワケ。ピントはあらかじめ距離の数字を合わせておいて、ファインダーを下から覗いて構図を決める形になりますね。
精密にピントを合わせるためのルーペも、ちゃんとあります。て言うか、ブローニー版ならともかく、135版ですと、これがないとピント合わせが辛いです。
ルーペの立ち上げや、ファインダーを開いたり折りたたんだりのとき、工作精度の素晴らしさを実感します。ガタが一切なく、きちんと起こせて気持ちよく戻せますから。今の樹脂製品群がどれもこれも素材の柔軟性に頼りきっているのと比較して、生産者の気概が桁違いだと思います。「物作り」とは、こういうレベルを指して言うのですよ。
マウントは、シンプルなネジ込み式です。M37 と言うそうで、ペンタックスなどに採用されていた M42 よりも、そしてバルナック・ライカの L39 よりも小さいサイズです。
旭光学は後のペンタックス発売の際に、ちゃんと M37 用の変換アダプタを販売したそうです。カメラに限らず今の、新規格のたびに旧型を切り捨て続けるメーカーどもは猛省すべきだと思います。アダプタの類は、もっぱら社外製品となってますからね。
「物作り」とは、こういうレベルを(ry
左寄りに取り付けられたこれも実はファインダーです。ただし、素通し以外の何の機能もありません(笑)。
精密に撮るときのレフレックス・ファインダー、スナップ撮影のときは構図のみで、という使い分けをするのでしょうか。ウエスト・レベル・ファインダーにありがちな機動性の悪さを補うものだと思います。
二つのファインダーを持つカメラ。
と言うと、スイスのアルパが第一に挙げられるでしょう。もっとも、あちらの高級仕様(アルネア7など)はレフレックスと距離計連動の二刀流でしたけどねー。
アサヒフレックスのファインダーは単体販売してくれてもいいほどの質感です。
混乱するのが、これ。シャッター・スピードの設定。
これね、フィルムを巻き上げた(=シャッターをチャージした)時点で有効な表示なのです。巻き上げてからシャッター・スピードの数字を合わせないと訳判らなくなります(苦笑)。
ちなみに、最終型の IIA には、スロー・シャッターが追加されたそうです。
後輩であるペンタックスと並べてみました。
本当は S2 にしたかったのですが、どこに隠れたのかどーしても見つからず、もう少し後の世代の SV に来てもらいました。よく似ていますね。さらに後の SP になるとレンズ・マウント部分が曲線美を誇るため、かなりイメージが違ってきます。
こうして比較すると、アサヒフレックスがペンタックスのベースになったというのが、よく判ります。ニコンで言うなら、SP をベースにしてFが開発されたのと同じでしょう。
「ペンタックス」というブランド名は、アイレベル・ファインダーに欠かせない「ペンタプリズム」から命名されたとのこと(ただし、国産初のペンタプリズム採用はミランダカメラなのですが)。
さすがに中身は違いますね。
とは言え、シャッター幕なんかは同じに見えます。シャッターを切ったときの感触も、そっくりです。
見た目、コンタックスII にも、どことなく似ている感じがするアサヒフレックス。
なかなかの名機だと思います。