(旧暦 葉月十二日)

 コバヤシ少年……どこまでも狂った奴。
 ハシバくんもたいへんだー。

 うーん。
 これ、素直にストーリを追いかけると二十面相の側に肩入れしてしまいそうになるんですよね。
 悪質な虐めっ子ども、クズ教師、ゴミ両親、悪徳医師、キ印犯罪者ども……等々。
 カガミやミナミさんは悪くない、と言いたくなっちまう。むしろ「もっとやれー」な感じ?

 ただ。
 システムとしての「二十面相」が起動したとして、それが広がっていくにつれ、当然のこと行き過ぎた行為も乱発するわけで。
 劇中に「免罪符」って言葉もあったとおり、暴走の危険を内包している。そんな正義は「偽善」や「独善」と変わらない。
 そんなのが犯罪に対する抑制力ってサー、ヤバさではシビュラ・システムに匹敵するかもしれんね。

 そこまで判ったうえで、にも関わらず、やはり二十面相側に共感してしまうのは、先のクズどもがクズすぎたからで。
 で、アケチ探偵の行動(「すべての二十面相を止める」ってヤツね)が、あくまでも自分都合(自分が数式の開発に関わったこと、その数式の結果がナミコシの死を必要としていること)からくるものだとも描かれてて。
 二十面相は“正義”で動き、私情で動くアケチに“正義”はない。

 それでいいのならいいんですがね。
 演出に疑問を抱かざるを得ない部分なのですよ。

 アケチ探偵を助けてくれるのが影男に黒蜥蜴に、その足下に踏まれてたオッチャン二人。
 揃いも揃って変態だらけ……あー、なんかアニメ版『いぬかみっ!』の最終回を思い出しましたよ。
 ナミコシも最後の最後までアケチにホの字だったし。
 アケチ探偵、友だちは選んだほうがいいと思う。

 実験作としては面白かったと思いますよ。
 乱歩、ほとんどかんけーねーし(爆)。



 ところで。
 ハナビシ先生って、けっきょく何者なんでしょーねー?
 あっちの人間かな? そっちの人かな?