(旧暦 水無月十日)

 かつての、オーディオ大ブームの頃から、たどりますと。

 通常聞こえる帯域(50〜15kHz 、あるいは 100〜10kHz)のみフラットであれば良いという姿勢で、ロクハン一発などの少数編成(ダイヤトーンの名機 2S-305 や、テクニクスの初期リニアフェイズ・スピーカ群も、この思想に近い)。
 可聴域をフラットにするためにユニットの担当帯域を細分化、超高域(20kHz〜)をも網羅すべく過剰なマルチ・ユニット構成(JBL のモニター・シリーズが代表的)。
 というスピーカ設計の二極化と、それに応じた各アンプ(各ユニットそれぞれ個別にアンプをあてがったマルチ・アンプなんてシステム構成もあったよねぇ……)。
 なお、FM放送はステレオとモノーラルの互換性維持に必要なパイロット信号が 19kHz である関係から、音声の高域を 15kHz でカットしている。つまりFM番組を聴いている限りは、どんなに超高級機を使っても超高域は決して再生されない。

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 人間の可聴域は限界ギリギリで 20〜20kHz なのだから、それより下も上も一切不要。よって、スパッと切り捨ててしまえ!
 とした音楽CD規格の登場。

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 根強いアナログ派からの突き上げに耐えられず、各メーカーが、音楽CD規格で切り捨てられた 20kHz〜の高域信号を補完(というか、でっち上げ)するCDプレーヤなどの機器を独自に開発(「レガート・リンク・コンバージョン」や「Supreme/D.R.I.V.E.」など)。

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 音楽CDよりも高域を収録できるSACDDVDオーディオ規格の立ち上げ。

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 耳には聞こえずとも、倍音成分は聴く人に影響を及ぼす。
 という、かつてデジタル技術屋たちが「怪談」だの「迷信」だのと笑って相手にしなかった、いわゆる「超高域は耳に聞こえなくても肌で感じる」ことが実際にあると解明・証明。

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 ハイレゾ音源の台頭。

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 ついに、あのソニーが超音波を増幅するアンプを販売(爆)。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1507/24/news096.html

 かつてのオーディオ全盛期に大活躍した名ブランド・ソニーの姿は今やなく。
 ソニー製品を買わない宣言している私に隙は、なかったのである。

 それはともかく。
 高域をカットするだの、意図的に補完するだの、積極的に前面に押し出すだのという考えが、そもそもダメなんだと思います。
 アナログ時代は、とにかく入ってくる音を機器の性能の範囲内で記録、それを再生機に可能な範囲で再生していた。これこそが「自然な音」につながるように思うのですよね。言ってみれば機器が自然体ですから。
 何事も無理は、いけないと思いますよ。無理しても歪みを生むだけです。

 個人的には、音のバランスだけで言うなら、ロクハン一発の思想で良いし。
 しっかり高域も欲しいとしても、一般家庭でのことなら、2ウェイで充分だと思います。タンノイの超高級スピーカだって2ウェイですぜダンナ。

 ハイレゾについては、お金もないしネット配信を聴く気もないので、私は静観するつもりです。肯定も否定も、しません。
 が、ハイレゾを売りたいがために、従来の音楽ソースを貶めるような行為をもしもするようなら、業界を呪いますからね(笑顔)。