望、中元 (旧暦 文月十五日、盂蘭盆)

 お盆というと里帰り。

 自分の里が田舎でなくとも、親の実家が田舎で「お盆=田舎」という関連付けがなされている人は、まだまだ多いかと思います。

 妖之佑も、その一人で。
 小中の頃は、夏休みとなると山村にある母上の実家に押しかけてました(と言うか母上が私を言い訳に、実家へゴロゴロしに帰ってた♪)。

 古い農家で、立派な佛間があったのと、家から歩いてすぐに墓地もあったので、お盆の行事は、それなりに行われていました。昔は迎え火も送り火も、やっていたそうです。
 ですが、精霊棚(盆棚)というのは、この目で見たことも、話に聞いたこともありません。おそらく、この地方には、なかったのでしょうね。

 よって精霊棚に関しては読んだ知識として語るのですが。

 盆棚の別名でも判るとおり、お盆に帰郷する御先祖様へのお供え物を飾る棚ですね。
 ナスやキュウリで作った牛馬や、素麺、その他季節の食品などなどが飾られてあるのを絵や写真、動画で見たことのある人もおられるでしょう。
 野菜で作った牛馬は御先祖様の乗り物とのこと。帰郷の際には足の速い馬で、あの世に戻る際は牛歩な牛に乗って、なのだそうです。粋な計らいですね。

 でも、妖之佑が触れたいのは、そこではありません。
 その下です。

 もちろん宗派や地域でも異なるのでしょうが。
 精霊棚は通常、二段構造になっており、上側は御先祖様用に、そして下側を無縁佛のかたがた用に使うのだそうです。
 帰る所のない佛さんたちにも「よかったら、どうぞ」と振る舞うわけです。

 ここが好きなのですよね。

 神社や墓地、街道の地蔵さんなどへのお供え物は、飢えた旅人を救う緊急食糧の意味も併せ持つので、必要があれば誰が取って食べても咎められることはない(ただし困窮していない者が手を出すのは、もちろんNG。あくまで緊急用なので、ビンボであっても地元の阿呆が、これを毎日アテにするのもNGと思われ)。
 という古い風習同様、日本の素晴らしいところだと思うのです。

 思えば、憑いた死霊を払うのも「除霊」ではなく本当は「浄霊」というそうですしね。
 エクソシストのように相手を力ずくで叩き伏せて滅するのとは発想が本質的に違うのでしょう。

 ん?
 西洋には、無縁佛に相当する人たちを癒す習慣ってあるのかな?