嫌な動きです。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130228-00000014-asahi-ind
AMのメリットは音質ではないと言うのに、どういうわけかAM局は音質を追い求めてきました(あの愚にも付かぬ「AMステレオ放送」などが、その例)。
ラジオ放送を、特にAMラジオ局をデジタル化するメリットは何か?
はっきり言いましょう。
あ り ま せ ん 。
逆に、AMラジオ放送のメリットは何か?
と考えると判りやすいと思います。
一つ。
周波数が低いので電波が届きやすい。
電波は周波数が高くなるほど光と同じ性質を持ちます。ために高周波数であればあるほど物理的障害物に弱い。要するに遮られやすいということ。
記事では「高層ビルのせいで届きにくい」とありますが、これは現在流通している安物ラジオやミニコンポが、かつての安物ラジオに比べてゴミ性能だから、という事実を無視したものです。「誘導」と言ってもいいほどの曲解ですね。
なお、ビルの内部に届きにくいのは鉄筋が電気的遮蔽物になるためで、これは周波数に関係ない現象です。
二つ。
受信機が普及しまくっているので、インフラの面でまだまだ強い。
はっきり言って、AM局のデジタル化なんてのは、今のラジオを粗大ゴミ化して新規格のラジオを強制的に買わせるための家電メーカーと組んだ陰謀にすら思えます。地デジが、そうだったようにね。
充分に浸透している規格を廃止するメリットなど、庶民の立場ではありえないのです。
三つ。
周波数が低いので電波が遠くに届きやすい。
いわゆる「雑音リスナー」の存在です。私のことで言えば、愛知県にいながらにして神戸の放送を聴ける、福岡の放送を聴ける、ということね。全国ネットされていない番組を圏外で聴くのは雑音リスナーにとり大きな楽しみの一つなのですよ。
これはAM、と言うか正確にはMW(中波)が夜間になると遠方まで届く性質を持っているからで、誰にも判りやすい例では夜になると露西亜語・中国語・朝鮮語がかなり強く混信するというあれね。大陸の電波がガンガン届いてくるのですよ。それほどに夜間は中波が遠くまで飛ぶのです。
デジタル化するとラジオ電波は県外どころか地形によっては県内にすらロクに届かなくなります。
SW(短波)については、もっとはっきり海外向け放送前提での運営ができるという大きなメリットがありますよね。海外放送を安価に受信できるのはAM方式の短波だけです。まあ、短波放送は、今回のデジタル化構想には入っていないんでしょうけどね。
ちなみに、もっと周波数の低いLW(長波)も遠くまで届きます。載せる情報量のことはともかくね。具体例が電波時計が利用しているJJY(標準電波)です。あれ、国内に二ヶ所しか送信局がないのですよ。それでも電波時計は日本全国で、ちゃんと機能しますよね。
四つ。
そもそもアナログ方式はデジタル方式に比べ情報の伝達性に優れている。
一見、真逆に思えるでしょう。ですが、これはアナログのレコード盤と、MP3 や WAV などのデジタル・ファイルとで比較すれば容易に理解できます。
傷付いてしかも歪んだレコード盤と、壊れたデジタル・ファイル。さて、高度で複雑な復旧作業をせずにそれでも音楽を聴けるのは、どっちでしょう?
ラジオのデジタル化でも、同じことが起こります。雑音混じりでも聴けるアナログ放送と、ちゃんと聴けるか一切聴けないかの二択なデジタル放送と。はたして、どちらが便利でしょうね。
特に災害など緊急時における安定性・信頼性も考えてほしいと思います。
五つ。
↑の緊急時にも関わるのですが。
現行のAM放送は電灯線や電池などの電源なしでも聴くことができる。
今でもキットは売られてるのかな? ゲルマニウムラジオってブツ。
あれは乱暴に言ってしまえば放送されている電波をそのまま聴く(つまり電波のみを電源とするワケ)という非常にシンプルなラジオで、パーツさえあれば誰にでも作れるほどに回路も単純です。無論、電源不要。そんな簡単な代物でも充分に放送エリア内であれば、ちゃんと聞こえるのです。
放送をデジタル化すると、こうはいきません。
以上のことから、ラジオ放送をデジタル化することに、リスナーの立場ではメリットなどなく、デメリットだらけであると断定するものであります。