(旧暦 閏弥生丗日)

 フェイク要素など一切なく予告編どおりの裏切り者でした。
 ……ったく、少しくらい工夫しろよ。

 レコアさんをやるのかと思ってましたら、シャナルアさんはミハルでしたか。
 スパイになった動機は、多くのかたが予想したであろうとおりですが。そのベタさは肯定できても、扱いがぞんざいすぎますね。ミハルだって数話を費やしたというのに。
 そして。キオ編でも、こういう戦争の悲壮さを描くというのなら。ディーヴァ・クルーの、あの「クセ者揃いの寄せ集め隊」という印象は不要、いや余計だったんじゃないですかね。艦長が頼りないルーキー、というだけでよかったのではないかと思います。

 ところで、弁当喰ってるドワーフの台詞で思い出しました。
 アスノ家ってMS技術を継承する名家、すなわち技術屋の家系だったんでしたっけ。そう言えば、アセムは学校でMS部員でしたね。
 ってことは……キオにMS操縦しか教えなかったフリット爺ちゃんって、もはやアスノ家の伝統すら、どうでもいいんかい?



 さて。
「戦争が始まって七十年」というナレーションの入るキオ編ですが。
 起点をUE襲来にしているとして。この「七十年」はフリットが闘ってきた七十年でもあるわけです。
 この意味からすると、『AGE』という物語はフリット・アスノを主人公とした“連続テレビ小説”と見てもいいかもしれません。「少年が青年を経て親となり老人に」というのは、まさにあの路線ですからね(まあ、あちらの主人公は基本的に、少女→娘→母→婆ちゃん、ですが)。
 となると、この連続テレビ小説もどきとしての結末、つまりはフリットのラストが気になるわけです。
 フリットは、いささか暴走気味かつ独善的ではありますが、根は良い奴です。それが少年時代に目の前で母親をUEに殺された悲惨な経験のため、極端になってしまっただけで、本当は良い奴です。成人してからの中の人が同じなクズ野郎ジェリド・メサとは雲泥の差です(ジェリドは終盤、カミーユに「俺は貴様ほど人を殺しちゃいない」と言いましたが、そもそも毒ガス作戦に参加した時点でジェリドの言う正義は根拠を失っています)。
 ですので、フリットが「こんな人生、無駄だった」と嘆く結末だけは願い下げです。

 ところがね。
 第一話冒頭、少年フリットが母親と別れてしまうシーンにて。
 自分が助からないと覚悟した母親は AGEデバイスフリットに託すとともに、何かを言いました。この言葉の内容は爆風爆音等々にかき消されフリットの耳には(おそらく)届かず、視聴者にも不明のままです。
 フリットは母親の遺言を「AGEデバイスを使ってUEと闘って、みんなを助けなさい」と解釈しているはずです。フリットの後見人となったブルーザー司令官の「救世主になれ」という言葉が、それにブーストをかけてますし。
 しかしね。違うと思うんですよね、母親の言葉。
 これが終盤になって何らかの形で明かされたとき、フリットは自分の人生すべてが間違った道を進んできたことに絶望するんじゃないかと心配です。フリットが半世紀以上をあそこまでブレることなく突き進んでいる根源は、自分が母親の遺志を受け継いでいるという信念ですから。

 ……まあ、『AGE』クォリティからすると、母親の台詞をぼかすだけで、そのまま放置って可能性もありますがね。


 七十年と言えば。
 偉大なるイゼルカント様って、今おいくつなんでしょうね?
 ディアナ姫みたく、必要なとき以外は人工冬眠なのかな?
 個人的には、とっくにあの世に旅立ち、今のは単なる虚像という真相で、拠り所を失ったヴェイガン人どもが絶望する展開を希望します。
棄民政策の犠牲者という立場には同情するが、コロニー破壊という大量虐殺をした時点で、ヴェイガンは悪そのものだからね)