(旧暦 閏弥生五日)

 ジャイアントロボ
 『少年サンデー版ジャイアントロボ限定BOX』
  横山光輝/小学館クリエイティブ


 こういう作品が復刻されるとは、ありがたいものです。

 横山光輝さんと言うと「漫画『三国志』の人」が一番、一般に判りやすい説明となりましょうか。
 巨大ロボット物の大家と言ってもいいでしょう。鉄人28号然り、ジャイアントロボ然り、三つのしもべ然り。
 とにかくレパートリーの幅広さに関して、手塚治虫先生、石ノ森章太郎さんと並ぶほどの漫画家さんです。

 ですが、個人的には、横山さんの真骨頂は諜報戦と、それに伴うアクションだと思います。スパイ映画のような、ね。
鉄人28号』でも、鉄人はリモコンで操縦する機械に過ぎないので、そのリモコンを巡っての争奪戦という展開があり、物語の魅力になります。
 逆にジャイアントロボことGR1は主人公・草間大作の声にしか反応しないため、敵味方で大作の生命に関わる闘いが繰り広げられます。登場人物みんな、60年代映画のスパイやギャングみたいな服装ですし♪
 横山作品の、もう一つ代表的なジャンルに忍者モノがありますが、忍者なんて正にスパイ、つまりは諜報戦そのものでしょう。

 こういった要素の集大成が『バビル二世』ではないかと個人的には思います。
 巨大ロボあり、忍術ならぬ超能力あり、諜報戦あり。
 BF団のロボット兵器GR1、GR2、GR3がそれぞれ陸海空に特化しているのと同様、三つのしもべも陸海空ですし。

 鉄人もロボも、感情を持たない兵器なのに瞳があるんですよね。ここがまた楽しい(ロボ実写化の功績は、これを忠実に着ぐるみで再現したこと)。残念なことに、バビル二世のしもべであるポセイドンでは、瞳が廃止されましたが。
 ちなみに、そのポセイドン。『ジャイアントロボ』に登場するライバル機、GR2の色を濃く受け継いでいると思います。どちらも海中用ロボットですし、頭部のシルエットも似てますし。

 東映が制作した実写版『ロボ』は、それはそれで面白いのですが。
 敵組織であるBF団の首領をギロチン帝王なる異星人にした時点で、横山作品の魅力をかなり削いでしまっていると感じます。東映としては円谷の『ウルトラマン』みたいな路線を目指していたそうで、BF団と闘う主人公側組織のイメージは、原作の諜報機関と違い、科特隊やウルトラ警備隊に近いものでした。
 東映による横山作品改造は、これに限ったことではなく、アニメ『バビル二世』の内容なんて、それはそれは酷いものでしたね。『飛騨の赤影』を実写化した『仮面の忍者赤影』も、かなりテイストの違ったものになっていますし。
 さらに遡って、東映ではありませんが『鉄人28号』の実写版は、横山さんを激怒させたとも聞きます(まあ、あれはいくら何でも酷すぎた)。

 ところで、妖之佑は長らく誤解をしていたようです。
 ので、その誤解による評価を、ここで変えます。
 あえて失礼な言葉を使わせていただきますと(汗)。

 永井豪なんて、たいしたことねーっ!

 どういうことかと申しますと。
 マジンガーZのブレストファイアは、GR1の灼熱光線。
 マジンガーZロケットパンチは、GR2が既に採用。
 空飛ぶ巨大ロボットも、GR3が既に実現。
 もちろんマジンガーZの光子力ビームよりも先に、GR1は目からビームを発射してますにょ。
 そもそも人が乗って操縦する巨大ロボットそのものが、『ジャイアントロボ』(小学館コミック版)に敵側として登場済み。
 つまり、マジンガーZにおける永井豪の独創部分って、あんまりないんじゃね?
 とゆーこと。
 永井さんが横山作品を知らなかったはずはないですからね(これでもし「知らん」と言ったら、パクリ中国と変わりねーぞ)。

 閑話休題

 この『ジャイアントロボ』、雑誌連載されて以降、ずっと単行本化されなかったそうです。理由は、作者である横山さんが許可しなかった(道理で探しても見つからんかったわけだ)。
 すなわち。
 横山さんが鬼籍に入られたことで単行本化が実現したという……何とも複雑な事情です。
 ファンの一人としては、単行本で読めるのは嬉しいことなのですけどね。