朔 (旧暦 睦月朔日、旧正月)

 これってさー、「ガンダム」のタイトルが付いてなかったら、とっくに見捨ててるよなー。

 と思う日曜の夕方でございました。

 UEは、やっぱり帰還民でした。
 しかしねぇ。まんま視聴者の予想どおりの展開・真相って……プロとして恥ずべきことなのでは?
 しかも盛り上がらない終わりかた。
ナデシコ』の木星トカゲのほうが、巧みに描いてたような気がします。

 ディーヴァ・クルーの素人ぶりは、まあ意図しての演出なんでしょうけどね。
 それにしても、あの突入は軍人としてありえんほどお粗末でしたね。無名クルーに合掌(種の無駄死に三人娘よりはマシかも)。

 なんでか連中、「勝った勝った」と大はしゃぎしてますがね。
 グルーデックも復讐を果たしたって満足顔してますがね。
 今回の作戦成功は、UEの隠れ家一つを叩いたに過ぎません。
 さすがに、フリットは納得してませんでしたが(苦笑)。

 これ、例えますと。
 宇宙戦艦ヤマトが、ガミラス冥王星前線基地を壊滅させたあたりの位置です。
機動戦士ガンダム』なら、ガルマ・ザビがシャアの策略で戦死するあたりになりましょうか。
 いずれも闘いには、まだまだ先がある段階です。遙かに巨大な敵が待ちかまえている段階です。
「勝って兜の緒を締めよ」ってところですよね。

 そういった前途多難さが『AGE』には微塵も感じられない。
 しかも、戦闘自体、盛り上がりませんでしたし。
 つか、前回にララァのパクりしたうえで、今回ビグ・ザムのパクりとかって、視聴者をなめきっとる。

 比較しますと。
 ヤマトの冥王星での闘いは、そりゃー盛り上がったものです。あれ、確か第7〜9話のエピソードですよ。それでも充分に山場だった。
「ガルマ、散る」も、かなり盛り上がった。それを受けてのイセリナ嬢の復讐と、ガルマ国葬でのギレン総帥の演説を併せて第10〜12話。

『AGE』は15話も消費して何やってんですかね。

 最初に「百年に渡る闘い」なんて言うから、いけないんですよ。
 第一世代では何も終わらないことを視聴者が知ってしまっている。
 知ったうえで観るから、まるで消化試合のような印象になるんですよ。

 宣伝の失策でしょ。
 公式サイトでの情報公開も、もう少しきめ細かい配慮をしないとダメですね。

 あと、無理に初代を意識しないほうがいいと思います。
 第一世代が『機動戦士ガンダム』を、第二世代が『Zガンダム』をパクる。
 ってことに何の意味があるんでしょうか(フリットの息子は、カミーユよろしく、エゥーゴならぬUE側につくとか?)。
『AGE』独自の、ぶっ飛んだものにすべきなのではないかと。



 さーて。
 少しだけ考察しますか。

 UEあらためヴェイガンの事情。
 移民→本国に見捨てられる
 の図式ですが。

 これは、かつて日本政府も、やった失策、あるいは犯罪ですね。
 棄民政策とか呼ばれるやつ。

 14年間、UEの攻撃に対して連邦が消極的だった理由も、ここにあるようで。
 徹底的に隠蔽すべき“黒歴史”ということでしょう。

 なら、どうしてグルーデックを銃殺刑にしなかったのか。
 どうしてディーヴァ・クルーを拘束しなかったのか(フリットは出世するらしいですし。あの女性クルーなど、告発文書を書いてるくらいに、監視対象になってないっぽいですし)。

 …………。

 ダメだ。
 何とか解釈のしかたで擁護しようとしても、できん。

 だいたいなー。
 火星圏に棄民によるヴェイガン国家が出来たって。
 その百年以上、地球の政府は火星に近づかなかったってこと? 火星圏の開発をしなかったってこと?
 ありえんでしょ。
 それなら、むしろ「火星に凶悪宇宙怪獣が巣くった」とか言って危険宙域に指定、その凶悪宇宙怪獣がついに地球圏に侵攻してきた!
 ってな社会情勢にするほうが、しっくりくると思うんですがね。
 まあ、それだとほぼ木星トカゲですが(汗)。

 矛盾部分を完全にスルーしたまま作ってしまってる現場と、自画自賛なメイン・ライターの態度が元凶なのですよ。
 これでは作品が愛されるわけないのです。かばおうという気になれません。

 最低限、表向きの態度さえ謙虚だったら、擁護派ももっと多かったでしょうにねぇ。



 なお。
 巷では、UEの宇宙服デザインを指して「ジャミラ」と呼んでいるそうです。
 見た目のことからではありましょうが。
 実は、これは言い得て妙なネーミングです。
 初代の『ウルトラマン』に登場するジャミラは、まさに棄民と呼べる人でしたからね。あのストーリは秀逸だった。今でも決して古くないと思います。